◆競争優位性の維持(Porter)

 競争優位性については、上記(1)~(3)の明快な戦略で説明できることは、余りにも有名です。ここで競争優位性について、実践上、重要なことは、その競争優位性の維持・持続です。そのため、この戦略においても、PDCAサイクルの実践は欠かせません。継続、環境変化への対応、より効果的なポジショニング等の総合活動(活動間の連携適応)に拠って、競争優位性の維持が可能です。

 この論点は、M.E.Porterは、戦略的ポジショニングの基本原則として、正しい目標バリュー・プロポジション、バリューチェーン、トレードオフ、活動間の適応、継続性を提示しています。ポーターの理論は、ポジショニング学派と呼ばれる程に、競争の激烈でないところに陣取ることを説いています。確かに同質的な競合がひしめいていては、価格競争に陥りやすく、利益は上がりません。
 ただ、ポーター理論は、ポジショニング理論だけではありません。例えば、業界リーダーに対する攻撃戦略を説いています。「似たような戦略で真っ向からぶつかってはならない」と云う訳です。攻撃戦略の基本条件とは次の3点の必要性と指摘しています。(1)低コストか差別化の点で持続的な優位性を持つ (2)それ以外の点で敵のリーダーの強みを生かせないようにする (3)敵のリーダーによる報復ができないようにする 。

  競合相手のリーダーを攻撃する道筋は3つあるとポーターは指摘しています。
 ① バリューチェーンの再編成
 製品の改良のみならず、物流やサービスを改善したり、マーケティングを革新したりと、様々な打ち手を組み合わせることが可能です。競争優位性を継続・持続するには、競合相手と異なる活動を行うか、類似の行動であれば、手法を変えないと真似されてしまいます。製造、搬送、サービス提供、マーケテイング、人的リソース等を、ライバルと違うやり方で組合せ、それを独自の顧客価値の提供に適合させます。収益性ばかりに気をとられていると、結果的に競合他社と同じ戦略で進めることになり、競争優位の獲得はリスクに曝されます。

 ② 競争の範囲(スコープ)を再定義
 とにかく、正面衝突の回避です。これには、目指すセグメントに競争の舞台を狭める集中戦略や、他事業との関連性を生かす水平戦略などが含まれます。製品やバリューチェーンにおける戦略の組合わせを伴わないものも、競合相手はすぐ模倣します。企業活動間すべての要素を、目的に適応させれば、戦略は模倣しにくくなります。 活動問の適応が図られないとすると、製造やマーケテイング、流通における個別の改善は競争相手に真似されるでしょう。

 ③ より巨額の資金を投入することです。尤も、これは失敗の確立が高いので、他の道筋を補完する場合にのみ意味があります。

◆内部資源論(Barney)

 競争優位性の維持については、Porter教授と並ぶ巨匠がいます。オハイオ州立大学のBarney教授です。彼も競争優位性の維持・持続について有用な提言をしています。彼は、競争優位の源泉を企業の内部資源に求める”Resource-based View" ( リソース・ペースト・ビュー)の提唱者の一人です。

 彼は、企業の持続的競争優位の要因を、企業が業界に提供する能力(Capability=ケイパビリティ)であるとして、そのケイパビリティを育む要因を、次ぎの4点にまとめて、企業支配(Ownership=オーナーシップ)や、管理(Control=コントロール)よりも、人的、組織的な柔軟性(Flexibility=フレキシビリティ)を重視する企業編成を取ることが重要だると説いています。根本的には人は法人格に優先するプライドを伴った人格があり、その人格の「自主的な経営参加」が重要であると云う訳です。企業対企業の競争におけるケイパビリティとは企業の組織的能力といったもので次の4つの要因が影響します。
  ① 自社独自の経験価値を築くこと
  ② サプライヤーとの間に密接な関係を築くこと
  ③ 顧客との間に密接な関係を築くこと
  ④ 従業員との間に密接な関係を築くこと

 重要な論点は、サプライヤー、顧客、従業員との人的な関係性に深く言及している点です。元々、リソース・ペースト・ビューは、コア・コンピタンスの思想と似通った点が多いです。しかし、コア・コンピタンスでは、このような感情を持った人間の信頼に基礎を置く人と人の関係性はあまり強調されていません。成果の客観的測定が難しいこともあります。物事の本質に「人には皆、感情があるんだよ」ことに思いを寄せた理論です。「歴史は夜、つくられる」と云う人の世の信実と、相通じるところがあります。あなたも経験からも納得できるのではありませんか。



◆競争優位性の分析  (アドバンテージ・マトリックス)
 
 競争優位性の分析(アドバンテージマトリックス)につきましては、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)のアドバンテージ・マトリクスが、有名です。
   
備考: BCG、及びボストンコンサルティング・グループは各々、
        BCGの商標権です


 業界での競争上の要因(戦略変数)の多寡と、それらの競争要因に係る優位性構築の可能性の大小の観点から、マトリックスをつくります。このマトリックスごとに戦略の方向性を考えれば良い訳です。このマトリックスは「優位性のマトリックス」ともよばれ、思考の整理ツールとして有効です。


  規模型事業・特化型事業は、業界で少なくとも、1社以上は確実に高収益を上げられますが、分散型事業・手詰まり事業は、少なくとも大企業としての優位性を構築できないため、企業として安定した収益構造を目指すという長期的視点で見れば、規模型事業・特化型事業のいずれかに転換していかなければならない羽目に陥ります。
 右列上のマトリックスは、優位性構築の可能性が低く、参入企業は、いずれも競争優位性を築くことが困難な事業です。このような事業は、長期的には全ての企業は顧客にとって、特徴のない製品を、同じ価格で、かつ低収益で提供する構造に繋がって行きます。


競争優位性の持続は、どうするの?
               
 復習として、ポーターの競争優位の戦略 Poter's Competitive Strategiesは、世界中で活用されている競合他社に打ち勝ち、優位性を築くための基本的戦略のフレームワークは、次の「3つの基本戦略」として提唱されています。当メニューでは、その確立した優位の維持・持続のための戦略を解説します。
(1) コストリーダーシップ
 規模の経済の追求と、経験の蓄積から効率性が増す「経験曲線の理論」から、コスト面からの最優位を狙う戦略です。低コスト実現で、競合上、同価格の場合は、競合相手より利潤が増え、また価格破壊等の低価格政策で、シェアアップします。
(2) 差別化
 自社の製品(サービスを含む)を、他社とは違う特異なものとして、顧客に認知させ、業界での優位性を築きます。差別化のツールには、ブランドイメージや、製品の機能、技術力による品質、顧客サービスなどがあります。
(3) 集中
 特定の顧客層、地域、製品の種類等に経営資源を集中し、特定のターゲットで、低コストと差別化の併合戦略により実施します。

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競争優位性の持続は、組織的な継続が重要な一要素です!
競争優位性を維持する戦略  ・ M.E.ピーター  ・ バーニー

     アドバンテージ・マトリックス
        優位性の築ける可能性 
     小      大

戦略変数の多寡  

 多  
 ② 分散型事業

  ④ 特化型事業
 小  
 ① 手詰型事業

  ③ 規模型事業

 そのような事業は、戦略変数の少ない「手詰まり事業」と、戦略変数は多いが、優位性を構築しにくい「分散事業」に分けられます。


① 手詰まり事業

  小規模企業がすべて淘汰され、残った大企業も決定的な優位性を作れなくなった状態の事業です。例えば、鉄鋼業。かって規模型事業でありました。しかし、もう、これ以上大きくなれないという窮境で、どのメーカーも収益を上げられない状況になりました。 該当事業の特徴は、次の問題点があります。
  ○ 差別化、ブランド化が困難
  ○ 低付加価値
  ○ 規模の利益が存在しない段階まで、市場が成熟し
   ている
  ○ 原材料価格が類似している
  ○ 技術面での格差がつきにくい
   ある意味で構造不況業種と考えられます。例えば、
  たばこや、塩・砂糖、、製鉄等がこれに当たります。

 
② 分散型事業
 事実上、大企業がいないのがこのタイプです。規模の経済は働かず、小規模なうちは儲かっても、大きくなると収益性を保てなくなります。
 これは、競争要因が多く、企業全体として優位性を構築することができないためです。アパレル業界がこのタイプです。 競争の変数はそれなりに存在しても、優位性の構築が難しい業界です。これに該当する事業の特徴は、次のような点
です。。
  ○ 地域性が強い
  ○ 規模の利益が存在しない
  ○ 人間関係が優位性の基盤となっている
  ○ 優位性の基盤が急速に変化する
  ○ 参入障壁が低く、低投資での市場参入が可能

 例えば、街中の寿司屋などがこれに当てはまります。地域の一角に「おやじ」が営んでいるような店です。その店が繁盛していたとしても、新たに近隣の立地に出店することは余りしません。何故なら、近隣には同様の寿司屋があり、よほどの強みがないかぎり、競争で共倒れになるらです。また、その店の最大の魅力は、酒の種類や美味い肴とともに「店主」の人間的魅力です。この魅力は、「支店」には持っていくことはできません。

 また、流行の激しい業界も、差別化の変数は大きいものの、優位性の構築は難しいのです。何故なら、優位性の基盤が急速に変化するため、今までの優位性があっという間に消え去るからです。例えば、アミューズメント業界です。ディスコ等のブームは、激しく到来し、激しく消え去ります。

 このような優位性の構築が困難な業界は、競争のやり方や、主力事業を変えれば、或いは競争優位の維持法は見つかるかもしれませんが、一般にはライバルとの差別化は難しいです。また、この事業の存続には、他社以上の事業と従業員の適応や、顧客やサプライヤーとの関係強化をはかるといったことが重要です。さりとて、巧く行くとは限りません。

 さて、次に右側のマトリックス(図表2-10)を考えてみましょう。ここでは、優位要因の選択の幅により、規模事業と特化事業に分かれますが以下で説明します。

③規模型事業
 規模(シェア)の大小しか競争要因が無く、規模の経済が働く事業。シェアの拡大が高収益に直結する。自動車業界がこのタイプ。規模型事業では、規模の格差によりコストや価格の優位性が顕著となります。その特徴は次のとおりです。
 ○規模の効果が大きい
 ○付加価値が高い
 ○大きい差別化は困難
 ○共通技術、共通コストのウエートが高い

 この種の事業は手詰まり事業と一見よく似た業界ですが、付加価値が高いことや、規模の経済が働く業界であるといった特徴がみられます。この業界では、すくない優位変数で勝ち抜くことになりますが、成功への鍵はコストの優位性です。コストの優位性は、累積生産量(シェア)で決まります。従って累積生産量を上げることにより市場のシェアを高め、コストの優位性を構築することで、上記のような特徴が表れてきます。典型的な例が、自動車業界や、シロモノ家電業界です。

④ 特化事業
 優位性構築の可能性が高く、かつ優位変数が多い業界です。規模事業と違い、シェアの優位性が必須条件ではなく、ある一定のシェアがあれば好業績が確保できます。規模(シェア)の大小が影響を及ぼす場合でも、特定分野で異なる戦略を採ることで、優位性を築くことができる事業。主要な競争要因は2~5個程度で、医薬品業界はこのタイプです。特徴としては次の点が挙げられます。
 ○付加価値が大きい
 ○差別化の余地が大きい
 ○差別化構築コストが全体のコストに占める割合が
  大きい 
 付加価値が大きくない「薄利」の場合は、「多売」しないと、小さいシェアでは利益が確保できません。付加価値が大きいといった点が条件となります。また、差別化構築以外のコストが大きいと、自社製品の差別化をはかるためのR&D投資が難しく、引いては、差別的優位性の獲得が難しくなります。


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